米山月間について
米山記念奨学委員会委員長 無漏田 幸呼
10月は「米山月間」となっております。
事業の歴史と特徴に関する掲載を「米山学友の群像 vol.5」より抽出し、米山記念奨学事業への知識向上と理解促進の機会とさせていただきたいと思います。
●ロータリー米山記念奨学事業とは
日本のロータリーが作った独自の事業で、34地区、全地区が参加する合同プロジェクトです。1952年に事業が始まって以来、一貫して日本で学ぶ外国人留学生を支援しています。
「公益財団法人ロータリー米山記念奨学会」は、この事業を行うために日本のロータリーが協同して運営する奨学財団で財源は全て皆さんからのご寄付で成り立っています。
この奨学金の最大の特長は「世話クラブ・カウンセラー制度」です。銀行振込が多い他の奨学金とは違って、米山奨学生にはロータリー活動に共に参加してもらい、交流することを大切にしています。
世話クラブ・カウンセラーになったロータリアンからは、
「カウンセラーをして、ロータリーの楽しさを知った」
「いったんロータリーを退会したが、また米山に関わりたくて再入会した」
「目に見える国際奉仕の最前線。これほど面白いチャンスはめったにない」
といった声が寄せられています。
●事業の始まり
終戦翌年の1946年、“日本のロータリーの父” 米山梅吉氏が亡くなりました。
3年後の1949年、戦争のため解散を余儀なくされた日本のロータリーが、国際ロータリーへ復帰します。
戦後、落ち着きを取り戻すにつれ、梅吉氏の功績を永遠に偲ぶことができるような、何か有益な事業をやろうではないかという声が大きくなってきました。
当時の日本はまだ食糧事情もはかばかしくなく、会員たちは「クラブへ行けばお茶を入れてもらえる」と、弁当を持参しストーブを囲みながら熱心に議論をしていたそうです。
そして1952年、東京RCの古沢丈作会長が「米山基金」の構想を発表しました。これは、アジアから優秀な学生を招いて学費を援助し、二度と戦争の悲劇を繰り返さないために“平和日本”を肌で感じてもらいたい、というものでした。
こうして、東京RCが始めた「米山基金」は、僅か5年で、日本の全ロータリークラブの共同事業として継承され、1967年には財団法人ロータリー米山記念奨学会が設立されました。
2017年7月には、財団設立50周年を迎え、今年(2018年)2月には記念式典が開かれまして、ロータリアン、学友、奨学生など約700人が参加しました。
●国際ロータリーと米山
米山は日本のロータリー独自の奉仕事業として作られ、発展してきたため、ロータリーの活動ではあるものの、国際ロータリーとは一線を画す状況が自ずと続いていました。そうした関係が次第に変化してきたのは2004年頃からです。
2004年11月のRI理事会で、「奨学金の授与を通し、世界理解と平和に貢献されている財団法人ロータリー米山記念奨学会を称賛する」とされ、これ以降、ロータリー米山記念奨学会が「多地区合同奉仕活動」(現在は多地区合同活動)の手続きを取ることにより、ロータリーの名称やロータリーマークを今後も続けて使用することを認める、ということが決議されました。
2007年には全34地区からの同意を得て、国際ロータリーの定める多地区合同奉仕活動として、すべての手続きを完了しました。
そして2014年1月のRI理事会では、ロータリー学友の定義が拡大され、米山学友もまた、ロータリー学友の一員となりました。これを受けて、2016年のソウル国際大会には世界中から多くの米山学友が集まり、ロータリーファミリーの一員として参加したのです。
●国大最大級の奨学生数
米山は、外国人留学生を対象とする民間の奨学金では国内最大規模です。
2018学年度は日本全国で852人が採用され、累計では世界127の国と地域から2万396人を支援しています。
奨学生の国・地域別の割合は、累計では中国、韓国、台湾が多いのですが、最近ではベトナムの奨学生が急増しており、今では中国に次いで、多くを占めています。
●奨学金の種類
米山の奨学金プログラムには5つの種類があります。
◎学部・修士・博士課程
基本的には大学・大学院の学生。学部生は月10万円、大学院生は月14万円が支給。期間は半年から長い人で2年間です。
◎地区奨励
大学だけでなくそれ以外の教育機関、たとえば高等専門学校専攻科(学部に相当)、短大、専門学校などからも、地区奨励奨学生として採用することができる。
◎クラブ支援
現役奨学生の期間延長プログラムで、延長期間の半額を世話クラブが寄付として負担。
◎海外応募者対象
試行期間を経て、来年2019学年度から正式プログラムになります。
日本への留学が決まっている外国人が、海外から個人で直接応募し奨学金を予約できるもの。
◎海外学友会推薦
海外の学友会がその国で募集し選考・推薦するもの。対象者は既に博士号を取得した上級研究者。現在は台湾と韓国の学友会で実施している。
●巣立った奨学生の活躍
こうして巣立った奨学生たちは、様々な形で活躍しています。ロータリアンになる学友もおり、現在把握されているのは231人。その中には、ガバナーになった学友も3人います。
<参考>
1人目:韓国の林隆義さん(リムユンウィ/1997-98年度 第3650地区ガバナー)
2人目:台湾の許国文さん(きょこくぶん/2005-06年度 第3490地区ガバナー)
3人目:台湾の林華明さん(りんかみん/2015-16年度 第3520地区ガバナー)
学友が中心となって設立したロータリークラブも国内外に5つあります。
また、韓国では2016年に、学友だけの衛星クラブ「韓国米山セソウル・ロータリー衛星クラブ」も設立されています。
●学友会(国内33、海外9)
巣立った奨学生のOB組織、米山学友会は日本に33(全地区)、海外に9つあります。
●学友会の活動(海外)
各学友会ではさまざまな活動をしています。
◎ミャンマー学友会では、子どもの教育支援に力を入れています。
◎台湾米山学友会では、毎年日本留学フェアでブースを出展し、米山奨学金をPRして台湾の若者に日本留学を勧めています。
◎韓国では、韓国で学ぶ日本人留学生に奨学金を支給しており、今年で累計8人の日本人がお世話になっています。
なおこれは台湾米山学友会がもともと実施していたもので、台湾では今年で累計25人の日本人を支援してくださっています。
◎ベトナムでは、まだ正式な学友会ではありませんがホーチミンでは学友グループが養護施設を慰問するなど、活発に活動しています。
●学友会の活動(国内)
国内の学友会では、現役奨学生と一緒に活動するところも多くあります。
◎第2620地区(山梨・静岡)学友会では、スリランカの病院へ医療器具を寄贈したり、子どもたちへ文具を贈る支援活動をしています。
◎第2790地区(千葉県)学友会が行っているもので、米山学友とローターアクトがフットサル交流をしている様子です。
◎関西学友会は、「米山教室」という面白い試みをしています。学友が先生となって、毎週、語学や料理などを教えています。
◎東京学友会の総会の様子で、米山梅吉翁の生い立ちを寸劇で披露しました。
●恩返しの気持ち
米山記念奨学事業の成果、それは「学友」そのものです。寄付が減っても学友の数は増え続けます。
2011年、東日本大震災が起きたとき発生直後から日本の無事を願うメッセージが相次いで寄せられ、国内外の学友から760万円の義援金が送られました。
米山奨学会への寄付は、ロータリアンだけではありません。学友からも先ほどの義援金以外に、累計3,339万円の寄付をいただいています(2018年6月末)。
東京の事務局にわざわざ大阪から来てくれた台湾出身の学友は、これまでに計200万円の遺言寄付を申請しています。
このほかにも、2007年から11年間、毎年欠かさず50万円を海外から送金してくれている中国の学友もいます。
こうした「寄付」という形での恩返しは、他のプログラムではあまりみられない、米山学友ならではのものだということです。
●奨学生は寄付額で決まる
奨学生数は寄付で決まるといっても過言ではありません。
2019学年度の奨学生採用数は30人増の850人枠です。
会員数が少ない地区は「寄付金総額」で大きな地区に及ばなくても、個人平均寄付額や、特別寄付をする人の割合が高ければ、その分採用数がアップする可能性があります。
一つのクラブで誰か1人が10万円寄付するよりも、同じ金額なら全員が5000円ずつ出した方が有利に働くのです。
●最後に
これからの世界情勢では、国と国との懸け橋となるような優秀な人材が果たす役割は一層大きくなっています。米山記念奨学事業の重要性は、更に増していくことは間違いありません。これまで日本のロータリアンが蒔いてきた「平和の種」を、今後も絶やすことなく大きな花を咲かせ続けていくこと、それが我々ロータリアンの使命と思います。今後も皆さんで一緒に、この米山奨学事業を盛り上げてまいりましょう!ご支援、ご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。