一生成香　No.34　「汝ら罪なき者石を擲て」

職業奉仕委員会　菊地　平

 
「～～姦淫のとき捕らえられたる女を連れてきたり、真ん中に立ててイエスに言う『師よ、この女は姦淫のをり、そのまま捕らえられたるなり。モーセは律法に、斯かるものを石にて撃つべき事を我等に命じたるが、汝は如何に言うか?』
かく言えるは、イエスを試みて、訴うる種を得んとてなり。イエス身を屈め指にて地に物書き給う。彼等問いて止まざれば、イエス身を起こして『汝らのうち、罪なき者まず石を擲て』と言い、また身を屈めて地に物書き給う。
彼等これを聞いて良心に責められ、老人をはじめ若きものまで一人一人いでゆき、唯イエスと中に立てる女とのみ残れり。～～」聖書ヨハネ福音書8-4～～～～イエスは「あなた方のうち潔白な罪を犯したことが無い者だけが、石を投げろ」とされたのです。～～～聖書でも有名な聖句とされています。
 
今年度は規定審議会があり、決議文が発表されました。
それを受けて、ガバナーは地区内4会場で、報告会を行いクラブ定款・細則を現状から変更をするよう指示されました。また2月２６日は鹿屋市でクラブ研修委員会による研修会もあり、地区としてはその周知徹底を計って参ったところです。
今年度の規定審議会決議は、日本ロータリー100年の歴史の中でも最も大きな変化であったと思います。たとえばこのような大変化です。
１、入会金規定の削除でありました。入会金は取っても取らなくても良い。クラブの裁量に任せるとなりました。
２、インターネット例会が可能となり。Eクラブのやり方でも良いとなりました。従来クラブとEクラブの区別がなくなったのです。
３、出席免除規定の緩和です。子供の誕生などではクラブの裁量によって12ヶ月以上の欠席を認めることも出来ることになりました。
４、例会頻度の緩和。最低月に2回は開催しなければならなりませんが～開催日時はクラブの裁量であるというように、クラブの自治権が、柔軟性として示されました。
既に月2回の例会とし、入会金ナシと決断したクラブもあります。
その事を推奨する積りはありませんが。自治権・柔軟性・元気なクラブづくりの第一歩ではあると思います。
５、会員身分の条件も簡素化となり、それを決めるのはクラブの裁量に任されることになりました。
６、もっとも大きいと思われるのが五大奉仕の職業奉仕にクラブが開発したプログラムに応える～～ということで、完全にWe Serveの時代を文章化したものとなりました。
Ｅクラブは充分な試験期間を経て認証されたものですが、我がＥクラブは従来クラブよりもこの３年団結･奉仕・寛容など満足な運営に努めて今日を迎えたと思っています。
そこで、規定審議会といえば思い出すことがあって書いて見ます。
2004年3月規定審議会が開催された時のことです。当時2001年度ＲＩ会長リチャード・キングのスキャンダルが2002年度ビチャイ・ラタクル会長によって告発されると言う不祥事が取りざたされていましたのでした。
2004年の規定審議会ではＲＩ会長の退職慰労金の廃止が上程されるということが判りました。当時私の同期ガバナー補佐に鹿児島中央ＲＣの国領覚というサムライがおりました。大いに立腹して、「地区でも役員やガバナーは365日奉仕を続けながら、誰一人として慰労金など1円も、もらったことはない、まして3000万円もの大金となると、財団寄付金は排除するしかない～」～と息巻いて、時の規定審議会・地区代表委員の海江田順三郎ＰＤＧに「ＲＩ役員に対する慰労退職金の廃止」を強く進言しておりました。
審議会では日本の代表委員34名の内3人が廃止表明ｽﾋﾟｰﾁをすることになっていましたが、会議の流れ雰囲気に圧倒されてか一人も廃止表明をしませんでした。採決の時間が刻々迫ってくる中で海江田ＰＤＧは「これはいかん、誰も表明者がいなければ、地区に帰って国料さんに合わせる顔がない、と勇気を鼓舞して「ミスターチェアマン！」と言って起立し日本語で堂々と、RI会長の慰労金廃止決議の表明をされたのでした。その勇気ある発言があって流れが変わり～～採決の結果廃止案は僅差によってではありましたが採択されて、RI役員は以後無報酬と決議されたのでありました。
 
　ＲＩ会長には世界各地を夫婦で旅行する公務支弁のため、ＲＩ本部名義のクレジットカードが渡されます。それに加えて会長ノミニー、会長エレクト、更に会長職完了後、それぞれ慰労金が贈呈されますが、その額は総計２２万ドルになります。当時のレートで3000万円です。
ところがキング会長の場合、会長就任早々その慰労金を先取りし、在任中のカード支払に8万6千ドルもの私的流用が発覚したのでした。
そこで任期満了後いっさいのＲＩ役職からはずされ、その後2年かかってこの流用金を返済されてはいますが役職からは脱落したままだということです。
勿論関係した事務総長もその後退任されています。
この事件は、ラタクルＲＩ元会長が内部告発をして表面化し、規定審議会の決議で、以後、謝金はナシ無報酬となり、現在も無報酬であります。一時期報酬１ドルという長く続いたこともありました。
人生には金よりも地位よりも尊いものがある、と言うことをその時学んだものでした。
最近の東京都舛添知事の公金私的流用のときも、政治家の政務調査費の私的流用という不正事件の数々にも、ただただあきれるばかりでした。
そこで、昔話となりますが、今もって鮮明に思い出されることがあります。
今から47年前の36歳ごろ?青年会議所全国大会が名古屋で開催され、会場が名古屋競馬場でしたが会員は観覧席に、主催者は競争馬の走るコースに作られた舞台で、おりからの満天の星をいただいての開会式でした。
冒頭、牛尾治朗会頭の第一声は「天にあっては輝く星　地にあっては吾が内なる道徳律」とカント哲学を引用した、自律の道徳論に学ぼうと呼びかけたものでした。若い菊地青年の情感がたぎる時間でもありました。
その後1988年リクルート事件が起こり、関連責任をとる形で牛尾治朗氏は一切の公職から引かれたのでしたが、身の引き際が良かったのでしょう今は完全に日本経済界を代表する人となって復帰されていて見事な活躍をされています。
 
冒頭の聖書に戻ります。
「王冠をかけた恋」と映画にもなった英国皇帝エドワード８世のことです。彼は来日し昭和天皇との写真も残っていますが、1936年1月即位早々シンプソン夫人との恋沙汰が問題視されました。所謂「王冠をかけた恋」です。
夫人の品行に照らして英国議会は皇帝の退位を迫ったのでした。議論の最終段階に到って一共産党議員から肺腑を衝く痛烈な一矢を浴びせられたのです～～
曰く「皇帝の退位を迫る議員諸公、あなた方自身の素行は如何？あなた方の私生活、蔭の行状は果たしてどうなのか？顧みてこの中何人に皇帝を責める資格があるか？汝等罪無き者まず石を擲て！」～～～
聖書の殺し文句で迫られ、議場は一瞬たじろぎ静まりかえりました。すると宰相ボールドウインが立ち上り沈痛な面持ちでこう答えたそうです。
「たしかに我々には誰一人として皇帝を責める資格は無い。然し、陛下は七つの海に君臨する帝国の皇帝である。帝国の象徴である皇帝は、その私生活に於いても国民の範として完璧でなければならない。これをわれわれと同列に論じることはできないのだ」
これによって議会は、かの一議員を除く全員一致で皇帝退位勧告を決議し、弟のジョージ６世が即位したのです。
今月の３月２日は宝塚音楽学校の卒業式で生徒代表は答辞でこう述べていました「清く・正しく･美しく、これからの人生を歩みます」～と。そうありたいものです。
 

第31回例会（通算第121回例会）にメークアップされた方は、以下の１０名（地区内６名、地区外４名）でした。