黒潮時評（地球温暖化）

　　　研修リーダー　桐明桂一郎

 

今年も暑い夏になりました。記録的な猛暑日が続きましたね。9月に入っても「季節はずれの暑さ」「秋の残暑」という言葉がテレビや新聞で使われていましたが、これには多少、違和感を覚えました。秋になっても25度以上の夏日、30度以上の真夏日、35度以上の猛暑日が全国的に続きました。季節的には秋ですが、気温的には夏が9月まで伸びたのではないか。地球温暖化が確実に進んでいるということです。
温暖化の影響はどうか。日本だけじゃないですね。世界各地で大雨、洪水、干ばつ、熱波などの異常気象が起きて、深刻な被害を与えています。最近の報道で注目したいのが南アジアのパキスタンです。6月中旬から雨期に入ったが、８月半ばから大雨に見舞われ、9月半ばまでの総雨量は平年の5.5倍に達し、全土の3分の1が冠水し、洪水、崖崩れなどが相次ぎ、子ども約500人を含め約1400人が死亡したという。ただ、パキスタン政府の発表では、4～5月に猛暑が続き、北部の山岳地帯にある氷河が溶けたことによる被害もあるとしており、災害担当の閣僚は地球温暖化に言及し、「世界が直面し、実在する危機であり、パキスタンはその震源地になっている。（我が国の温室効果ガスの）排出量は世界全体の1％に満たないのに」と指摘、排出量の多い西側諸国に支援と対策を求めている。当面、心配されるのは食料と水でしょう。大雨で約1万７千平方㌔の農地が被害を受け、７５万以上の家畜が犠牲になったという。これはパキスタンだけの問題ではなく、アフリカなど干ばつ被害に苦しむ国々が共有する食料危機であり、国際的な支援体制が必要でしょう。特に途上国への救助体制づくりは急がねばなりません。
 
私がパキスタンのケースで改めて考えさせられるのは、大雨と干ばつとの関係です。真逆の関係なのに深く結びついているということですね。まず、地球が暖められると、海水の温度も上昇する。温かくなった海面からは多量の水蒸気が上昇し、強力な雨雲となって、大雨を降らす。そこで、一瞬にして水浸しになる干ばつ地帯も出てくる。雨だけではない。北極、南極では現在、急速に氷が溶けており、今世紀半ばには消えてしまうという。すでに、温暖化で海面が膨張しているのに、北極、南極の氷が溶けることで海面はさらに上昇する。世界各地で高波の被害がさらに増えます。特に、海岸線に囲まれた日本は大変ですね。
 
そこで、こうした気候変動、異常気象に深く、広く関わる地球温暖化にどうストップをかけるか、待ったなしの状況に来ているようです。世界各国で取り組みが始まっていますが、日本も2020年10月,2050年までに森林などの吸収量を差し引いた温室効果ガスの排出量をゼロにするという「50年実質ゼロ」を宣言しました。目指すはパリ協定が努力目標とする「産業革命前からの世界の平均気温を2度以下、できれば1.5度以下に抑える」である。すでに世界の平均気温は1.1度上昇し、大きな災害が起きている状況から1.5度以下に抑えたいところですが、専門家の間からは、世界各国の取り組みの現状からして1．5度以下は無理という予測が出ています。
日本の場合、例えば電力関係では総発電量に占める電源構成を再生可能エネルギーと原発のほか、多くの二酸化炭素（CO2）を出す石炭火力を加えている。国民の間からは「石炭は止めて」「原発は危ない」といった声も出ています。いずれにしても、「50年実質ゼロ」達成のためには産業界も国民の生活も大きな変化を迫られます。国連気候変動に関する政府間パネルは「地球温暖化が進むと、極端な高温や大雨、一部地域における干ばつの強度と頻度が増える」と警告しています。人間がつくり出した温暖化を、止めるのは人間しかいないという覚悟が必要です。「環境の保全」を重点分野に掲げるロータリーは「地球環境の保全」を優先プロジェクトとして、人類の危機にもつながる地球温暖化の防止にしっかりと取り組んでいかねばなりませんね。